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Posted by あしたさぬき.JP at

2013年12月24日

「地域に出て思うこと」

「地域に出て思うこと」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 部屋の中にいるのがもったいないくらいに良い天気。風も強くないし、そんなに寒さも感じない。こんな日は外に出るのがいい。
 施設に入所しているお年寄りと職員は散歩に出かけることにした。参加者は脳梗塞で麻痺の残る方や認知症の症状のある方が数人。街へ出ると様々な出来事に遭遇するから面白い。子供たちがケンカしていると、その仲裁に入ったり、横断歩道で買い物袋をたくさん下げている若い主婦を見かけると、その荷物を半分持ってあげたり。
 「要介護状態の方や認知症の方の理解は成されていると思いますか?」そう聞かれ、成されていないと答えたことがある。理解と言っても、どういうふうに理解されているのか甚だ疑問だったから。“要介護状態や認知症にならないように予防しなくては”とか“認知症の人は皆で助けてあげなくては”とか、少し違う気がする。要介護状態や認知症になることが不幸なことのように聞こえるのだ。 少なくとも、うちの入所者は街へ出ても助けられてばかりではない。子供や若い主婦の力になり助けとなっているし、以前は、お遍路さんの格好をした外国人に道を教えたことだってある。地域に困っている人がいると聞けば何か力になれないかと模索する。そんな入所者を見ていると、もっと違う理解が広がってほしいと願う。病気や認知症の有無で幸か不幸かは決まらないのだ。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編

2013年12月17日

「もったいない」

「もったいない」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 デイサービスに来ているトシコさんは認知症で「もったいない」が口癖。だからだろうか、トシコさんの着る冬物の上着は毎年同じ物だし、出された食事も残さずに全て食べる。
 そんなトシコさんはデイサービスに来ているとき「もう、帰ります。」と言って、玄関で車を待っていることがある。そんな時の理由は“着てきた服が違う”か“昼食が全て食べきれなかった”かのどちらかだ。
いつもと違う服を着てくれば、「前の服を捨てられたらもったいない。」と言って帰ろうとするし、昼食を残してしまったら「申し訳ない、作ってくれた人に会わせる顔がない。」と言って帰ろうとする。なるほど、理に適っているなと思う。
 このような言動を、徘徊や帰宅願望と一言で片付けてしまう人もいるだろう。でも、トシコさんのように認知症であっても「どうして?」と聞けば、「そういうことか。」と納得させられる理由をみんな必ず持っている。着る物や食べる物を平気で捨てたり残したりする神経や、自分たちが理解できない行動を変な行動と決め付けるほうが、おかしいのかもしれない。
 トシコさんは、物のない時代を生き抜き、未だに物を大切に思うことを、私は素晴らしいと思い尊敬する。大量生産・大量廃棄という時代の流れの中、トシコさんは日本独自の精神「もったいない」を守り続けている御一人なのだ。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)

2013年12月10日

「人と人との在り方を教えてくれたハルさん」

「人と人との在り方を教えてくれたハルさん」

~心に積み重なる 様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 ハルさんは脳梗塞で倒れて以来、麻痺が残り認知症の症状も見られるようになり施設へやって来た。そんなハルさんの介助をさせてもらうことが多い私。部屋へ訪ねるたびにハルさんは「来てくれてありがとう。」と言ってくれる。
 先日もハルさんの部屋を訪ねると「来てくれてありがとう。」と言ってくれた。ここまでは普段通りの会話。でも、その日は「今度はお寿司を作っておくから、持って帰ってね。」と言う。ハルさんが、お寿司を作れないことは麻痺の残る身体を見ればわかる。でも、そう言ってくれたことが嬉しくて「ありがとうございます。楽しみにしています。」と返事を
した。
 それから数日して、ハルさんの娘さんが面会にやって来た。ハルさんは娘さんに「お寿司作ったから、届けてきて。」と、ずっと言っていた。もちろん、どこを見てもお寿司なんてあるわけがない。横でそれを聞いていた私は、何だか申し訳なくなって、娘さんに事の経緯を伝えた。すると「母は昔、訪ねて来てくれた人や、お世話になった人に、お
寿司を作っていた。あなたが、部屋へ来てくれたり、いろいろ助けてくれることが嬉しかったんやね。」そう言って、娘さんは笑っていた。
 認知症で、時間も場所も季節も人も解らなくなってしまったハルさん。でも、ハルさんの気持ちの中で肝要なところは全く衰えていない。私はそのことを素直に尊敬した。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)

2013年12月03日

「立場が変われば…」

「立場が変われば…」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 要介護度3のフサコさん。難聴、脳梗塞、心疾患など病気を抱えている。以前は、どちらかと言えば、“助けてもらう側”だった。周りの仲間は比較的元気な方が多かったし、退院したばかりで歩くことが困難だったフサコさんの車椅子での生活は、なかなか大変なものだったから。
 デイサービスでは、ここ最近、要介護度の高い方の利用が増えてきた。そんな中でフサコさんを取り巻く仲間の顔ぶれも変わっていき、フサコさんは“助けられる側”から“助ける側”へと立場が逆転していった。
 デイサービスが終わり利用者の皆さんが帰り支度をしていると、フサコさんは車いすから立ち上がって、目の前にいる要介護度5のタケシさんの車椅子を押しながら玄関まで行く。タケシさんが無事に送迎車に乗り込むと、手すりを伝ってデイサービスのフロアに戻り、今度は要介護度4のキヨコさんの車椅子を押して玄関まで連れてきてくれる。
 フサコさんは、おそらく自身が要介護度3だということも、タケシさんやキヨコが要介護度4だとか5だとかいうことも知らないと思うし、気にもしていないだろう。自分より困っている人を助ける。動機はただそれだけだ。でも、これは、以前にフサコさんを助けてくれた方々がいたことが大きく影響していると思う。「あの時、私が助けられたから、今度は私が助ける番。」そんな思いが働いているのだろう。次は要介護度4のキヨコさんが誰かを助けているかもしれない。



  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)