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Posted by あしたさぬき.JP at

2013年07月30日

「夏の思い出」

「夏の思い出」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 シゲルさんの孫が県外から遊びに来ている。そう、子供たちは夏休み。おじいちゃんのシゲルさんは孫の帰省がうれしくて仕方ないようだ。連日のように孫と虫捕りや魚釣りに行っているからシゲルさんは真っ黒に日焼けしている。
 シゲルさんは認知症があるので本当は孫がおじいちゃんを連れ出していると言ったほうが正しいのかもしれない。でも、孫は小学校の低学年で「認知症って何?」って感じ。それが逆にシゲルさんにとって良いようだ。孫はシゲルさんを心の底から頼りにし、虫捕りの名人として尊敬している。そんな二人は、先日カブトムシを捕まえに行ってウリボー(イノシシの子供)を捕獲するという珍事を起こした。虫捕り網で捕まえたというのだから凄い。
 ウリボーを得意げに連れて帰った二人は、シゲルさんの奥さんのフミコさんから大目玉を食らったそうだ。というのも、フミコさんは動物が苦手で子犬にも触れない。そんなフミコさんの前にウリボーを連れて行ったもんだから、フミコさんもビックリして泣き出すやら怒り出すやらで大変だったとシゲルさんは笑って教えてくれた。詳しく聞けば、シゲルさんと孫は正座させられて、みっちり説教されたのだとか。
 虫捕り、釣り、お祭り、花火。夏は思い出になりそうな楽しいことが沢山ある。でも、シゲルさんは「孫と一緒なら怒られることすら良い思い出になる」とご満悦の様子。確かに孫にしてみてもちょっとした珍事は忘れ難い思い出になるものだ。二人は早くもこの夏一番の思い出を手に入れた。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編

2013年07月30日

「百聞は一見に如かず」

「百聞は一見に如かず」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 この時期、来年就職を控えた学生さんが施設見学に来ることが多い。今日も2人ほど見学に来てくれた。
 2階の特養を案内していると、入居者に色々と声を掛けられる。例えば、フクオさんは「トイレまで行くから手を貸してくれるかいのぉ」と学生さんに声を掛けてくるし、ヨウコさんは、「背中が痛いからさすってほしいわ」と学生さんに頼んでくる。
そして、ショウゾウさんは「添い寝してくれぇぇ」と学生さんに懇願してくるのだ。
 こういう光景を目の当たりにすると、入居者からすれば学生も職員も、新人もベテランも一切関係ないことを再認識させられる。つまり、人を選んで声は掛けてこないということだ。自分が困ったときに目の前にいる人に手助けを頼む、ただそれだけの事。だから、新人職員であっても「新人なので出来ません」とは言い出せない状況に緊張するが、それ以上に、自分を頼って声を掛けてくれたことが嬉しくて、何とか力になりたいと思う方が先立つだろう。それが、新人扱いされず一人の介護士として頼りにされる、この仕事の醍醐味だと思う。
 私は、そんなことを、フクオさん達の行動に付け加えて話をさせてもらったが、今回は私の話は必要なかったかな。三人の行動がその全てを学生さんに伝えてくれたようだ。「一瞬だったけど、声を掛けられて嬉しかった」と学生さんたちが高揚しながら言ってくれた姿をみて、そう確信した。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編

2013年07月23日

「マチコさんの絶対音感」

「マチコさんの絶対音感」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 マチコさんは99歳。自称作曲家。耳が遠くて周りの人の声はあまり聞こえていないようだ。
 そんなマチコさんはときどき鼻歌を歌っている。誰かの歌でもなく、流行の歌でもないマチコさんオリジナルの曲だ。マチコさんが言うには「周りの人の声がこんなふうに聞こえる」と言っている。つまり、耳の遠いマチコさんに周りの音は曲として聞こえているのだろう。聞こえたままを鼻歌にするマチコさん。
 先日も「今日も曲を作った」と嬉しそうに言っていた。その曲のヒントはどこから得たのか訊ねると、「隣に座っていた兄さんが歌っていたから、ちょっとだけ拝借した」と言う。その日、マチコさんの隣に座っていたのはトオルさんだった。脳梗塞で上手く喋ることができずに、何かあれば「ウー、ウー」と言って訴えてくる。ともすれば「うるさい」と捉えられるかもしれないトオルさんの訴えを、マチコさんは「歌っている」と言うのだ。
 ある音を聞いたときに音名が瞬時にわかる能力がマチコさんにはあるのかもしれない。それが、周りの喧騒を音楽へと変えて、すべての出会いが素敵なものになっている。そして、「ウー、ウー」と訴えるトオルさんを、誰も「うるさい」とは言わない。それは「歌っている」と言ったマチコさんの影響だろう。周りの人まで幸せにするマチコさんは真の音楽家なのだ。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編

2013年07月09日

「お弁当ひとつ」

「お弁当ひとつ」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 最近アキさんという女性が配食サービスを利用してくれるようになった。独り暮らしで脳梗塞の後遺症のあるアキさんに毎日の食事の準備は大変なようだ。そのアキさん、毎回お弁当を自宅へ届けると、食べ終わった頃に感想の電話を入れてくれる。
 「今日のお魚は良い味付けでしたなぁ」「今日の和え物の塩加減、最高でしたぜ」などお弁当の感想から「今日、お弁当持って来てくれた職員さん男前でんなぁ」「今日、来てくれた職員さん、私の話に最後まで付き合ってくれましたから、帰るんが遅ぉなりますけど叱らんといてあげて下さい」など職員のことまで。アキさんは決して悪いことは言わない。良いことだけを伝えてくれる。それがこちらにとって、“やる気”になっているのを知っているかのようだ。
 独り暮らしのアキさんには県外に娘がおり、アキさんの独り暮らしを心配していた。脳梗塞の再発や社会からの孤立、そして食事が無事にできるかどうかなど。しかし、アキさんの電話はその心配が無用だということを示しているようだ。事務所の職員もアキさんからの電話は“今日も元気で、しっかり御飯を堪能してくれた証”だと思って楽しみにしている。
 今日はアキさんの家へお弁当を持っていく日。アキさんがどんな感想を報告してくれるのか、作る人も持って行く人も楽しみにしている。そして配食サービスを利用されている他の皆さんからも良い声を聞きたいと、お弁当に込める気合は、広がっていくのでした。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編

2013年07月02日

「地域からの来訪者」

「地域からの来訪者」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 脳梗塞を3度繰り返し、その後入居になったエミコさん。家族は遠方に住んでいるため、なかなか面会に来ることが出来ない。それが少し寂しそうなエミコさんを他の入居者の皆さんと一緒に散歩に連れ出したのは3ヶ月前のこと。
 時代は変わったとはいえ、昔遊んだ海や山や風に乗って流れてくる匂いは昔のままで懐かしいと言うエミコさんは、海の向こうに見える半島を指差して「あそこから、こちら側まで泳ぐ大会が小学校の頃にあって…」と話してくれた。そんな話をたまたま聞いていた地域住民のスズコさん。「私もその大会に毎年出ていたよ。ひょっとして同じ小学校?」とエミコさんに気さくに声をかけてくれた。
 それから毎回、散歩に海沿いを通るとスズコさんに出会う。どうやらスズコさんの家は漁師をやっているようで、毎日ここで仕事をしているらしい。何度か会って話をするうちにエミコさんとスズコさんは同じ小学校で同級生だということが解った。
 そんなある日、何の前触れもなく施設にスズコさんがやって来た。聞けば、仲良くなったエミコさんと昔話の続きをしに来たと言うのだ。それからというもの、スズコさんはしばしばエミコさんに会いに来るようになった。エミコさんもスズコさんが来るのを楽しみに待っている。風景や匂いだけではなく、そこに住む人もまた懐かしい


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)