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Posted by あしたさぬき.JP at

2014年11月28日

「病気なんて…」

「病気なんて…」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 タケシさんは73歳。数年前に脳梗塞で倒れたが幸いにも大事には至らなかった。その後、癌が見つかり手術をしたが、これも無事に成功。現在は糖尿病で通院しながらも、自宅での生活を謳歌している。
 これだけの病気をしたら気が滅入りそうなものだが、タケシさんは違う。昔、町内会長をしていたこともあり、引退した今でも町内の催し物や会には参加している。そこでタケシさんは自分が病気した時の経験談を皆に話しているのだが、毎回決まって教えてくれることの一つを紹介する。
 同世代の人と話すとき、たくさん病気しているほうが話題に事欠かず良いということ。つまり、歳を取ると多かれ少なかれ調子の悪い所を抱えているもので、病気とは高齢者の共通の話題になるらしい。病気で話が弾み、関係ができ、気に掛け合うことで独りではなくなる。これが逆に、全く病気をしていなかったら、同世代の人たちとは話が合わず、会話が続かない。そうなると、独りで寂しい生活を強いられていたかもしれない。そう考えると、病気というのも悪くはないだろうと。
 考え方の善し悪しはともかく、タケシさんの前向きな姿勢には頭が下がる。病気の一つや二つは話のネタだと思うその豪快さが自宅での生活を謳歌する秘訣なのだろう。


  


Posted by syuri at 10:49Comments(0)介護編

2014年11月21日

「目の中に入れても痛くない」

「目の中に入れても痛くない」
~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 脳梗塞で倒れ麻痺の残るマモルさんは、自他共に認める強面。本人はそれが原因で50歳まで結婚できなかったと言うほど。昨年、娘さんが結婚した時は「孫ができても、おじぃちゃんではなく、マモルさんと呼ばせる。」などと強気に言っていた。
 それから一年。先日、マモルさんに初孫が誕生した。娘さんは生まれたばかりの赤ん坊を連れて面会に来てくれた。赤ん坊は、玉のような男の子。これはマモルさんも喜ぶだろうと「マモルさん、娘さんとお孫さんが来られましたよ。」と声を掛けても、強面を崩すことなく「うん。」と一言だけの返事で済ませてしまう。孫との初対面なのに…
と不安になるくらいだった。
 ところが、強面で待ち構えていたマモルさんが、孫と対面した途端「おじぃちゃんでちゅよー。」と言うから驚いた。娘さんも「〝でちゅよー〟はないんじゃない?」と言うと「麻痺して呂律が回らんのだ。」と照れながら、目尻が下がりっぱなし。それ以降、孫の前では呂律が回らない日が続いている。
 それともう一つ。マモルさんは、孫と一緒に出掛けたいというだけで、娘さんの車で幾度となく外出するようになった。昔から車での遠出は〝乗り物酔いするから嫌いだった〟と聞いていたのに。乗り物酔いよりも、孫の喜ぶ顔見たさのほうが勝っているようで。孫が誕生してマモルさんとその生活が少し変化した。


  


Posted by syuri at 07:00Comments(0)

2014年11月14日

「地域住民として」

「地域住民として」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 仕事が休みの日、車で出かけることにした。家から出てすぐのところに横断歩道があるのだが、そこを一人の女性が歩いていたので、私は車を停めた。
よく見れば、デイサービスに来ているハナエさんだ。近所の店で買い物をしたのだろう。手には買い物袋を持っていた。私の知る限り、ハナエさんは数年前に脳梗塞で倒れた。麻痺はほとんど残らなかったが、物忘れが目立つようになり、デイサービスを利用するようになったと記憶している。
私は、ハナエさんの家での生活をなんとなくしか知らないから、施設に電話をして、ハナエさんが歩いていることを伝えた。ハナエさんのことをよく知るデイサービスの職員は「大丈夫ですよ。近所のお店で牛乳とパンを買うのはハナエさんの日課です。」と言う。確かに袋から牛乳のような物が見えてはいるが、本当に大丈夫なのか不安で仕方のない私。声を掛けようとしたら、横断歩道を渡ってすぐのところにある家にハナエさんは入っていった。傍まで行って表札を見ると、どうやらハナエさんの家のようだ。
ハナエさんの力を、大丈夫か?と疑ったのは失礼だったか。デイサービスの職員なら疑わずに普段の光景だと目を細めて見送っていたのだろう。でも万が一ってこともあるし。私も地域の中で生活している。しかも、ハナエさんと同じ地域に。出過ぎず引っ込み過ぎず上手にお付き合いしていこうと思った。


  


Posted by syuri at 07:00Comments(0)介護編

2014年11月07日

「学び」

「学び」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 最近、利用者の間で密かに流行っているのが押し花。そのための花を探しに散歩に出ることが多くなった。
普段は気にも留めないが、探しながら歩くと多くの花が咲いていることに気が付く。店頭に並んでいるような花や、名前も知らないような花がたくさん咲いているのだ。ある利用者は、図鑑を自宅から持って来て、初めて見る花の名前を調べていく。「こうして調べたら、次からは散歩するたびに、この花が目に入ってきて楽しくなるんやで。」と。
 利用者と一緒に調べて〝イナカギク〟という花があることを知った。白い小さな花だ。それ以来、外を歩くと「あっ、イナカギク」という具合に目に入ってくるようになった。今まで意識の外にあったから、咲いていても目に入ってこなかったのだ。「あの利用者が言っていたのは、このことか。」と教えられ、納得させられた。
 さて、押し花だが、利用者の皆さんは雑誌や分厚い本で押し花を作っている。そのため、皆さんが帰った後には、高く積み上げられた本が隅の方に並べてある。以前、そんなことを知らなかった私は、これらを本棚に戻そうとして、挟んであった押し花を全部落としてしまったことがある。それを利用者の皆さんに報告すると「いつもと違う事には意味があると思え。」ということを教えられた。
今、私は、押し花を通して多くの事を学んでいる。


  

Posted by syuri at 07:00Comments(0)介護編

2014年11月02日

育児教室

育児教室

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 半年ほど前に曾孫が誕生したユリコさん。最近は家族が曾孫を連れてユリコさんの面会によく来てくれる。
 この曾孫は、ユリコさんだけではなく他の入居者の皆さんにも大人気。ユリコさんの家族が来ると、どこからともなく入居者の皆さんが集まり出して、ユリコさんの曾孫は、いつの間にか大勢の年寄りに囲まれている。こうなると、必ず、曾孫を「抱っこさせて。」と言う方がいる。こんな小さい子を落としたりでもしたらと、私なんかは冷や冷やするが、入居者の皆さんが優しく抱っこする姿は、流石だなと思うほど様になっている。「こう持つと首が安定して赤ちゃんが楽なんやで。」とか言ったりしながら。
そして、いつの間にか、赤ちゃんが泣く理由、オムツの替え方、風邪を引いたときの対処法などを、若いお母さんに伝授する時間になる。若いお母さん、つまりユリコさんの孫は「育児教室みたい。
私にとって、頼もしい時間を過ごさせてもらっている。」と嬉しそうに言ってくれた。
今日も午後から面会に来てくれていた。帰り際に、今日は何を伝授されたのか聞いてみると、“ 旦那に父親の自覚を持たせる方法”を伝授されたのだと言う。ユリコさんの孫は「参考にします。」と意気揚々と帰って行ったが、いったい、どういった内容だったのか、気になって仕方がない。


  

Posted by syuri at 07:00Comments(0)介護編