この広告、メッセージは90日以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事でこのメッセージが消せます。
  

Posted by あしたさぬき.JP at

2013年08月28日

「スタイル」

「スタイル」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 ヒロアキさん、仕事をしていた頃は、家のことは奥さんに任せきり。靴下一つ、ハンカチ一つ奥さんに聞かないと、どこにあるかわからなかった。だから、奥さんが、出かけるヒロアキさんに「靴下出しておきますよ。」「はい、ハンカチ。」と渡していたようだ。それが、長年培ってきた二人の生活スタイル。
 今でも、朝、デイサービスのお迎えに行くと奥さんが「靴下どうぞ」「ハンカチどうぞ」と奥さんがヒロアキさんに手渡す。何度も言うが、それが二人の生活スタイルだから。しかし、認知症の進んだ最近のヒロアキさんは、それが気に入らないようだ。
どうも、子ども扱いされていると思ってしまうようで「小学生じゃあるまいし。」と怒ったように奥さんに当たる。それが元で二人は喧嘩になってしまうことがあるんだ。
 先日、ヒロアキさんの定期受診の日。奥さんは先生から「ヒロアキさんの思うようにさせてみては?干渉しすぎるのも良くないですよ。」と話を聞かされた。正直、私もそんな気がしていた。でも、奥さんの表情は晴れ晴れとしたものではなかった。
 奥さんにしてみれば、良い時も悪い時も数十年そうしてきた二人の生活スタイル。それを今も変わらず続けているだけなのに。このスタイルを変えると、今までの二人の生活を失ってしまうような気がして、どこか寂しいのかもしれない。今までのスタイルを、一朝一夕に変えようって方がどだい無理な話か。二人が喧嘩することなく以前のような生活を送る方法は他にないものか。考えてみる事にしよう。



  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編

2013年08月27日

「お風呂場にて」

「お風呂場にて」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 テツヤさん70歳。脳梗塞の影響で麻痺が強く残り、自宅の浴槽には入れなくなってしまった。そのため、短い時間のデイサービスを入浴目的で利用している。
 先日は私がテツヤさんの入浴の手伝いをさせてもらった。湯船にはテツヤさんが一人だけ。テツヤさんが「ちょっと、こっち来てみろ」と声を掛けてきた。近づくと「おなら」と言ってタオルを風船のようにして湯船の中に入れて、それをお尻で踏む。すると空気がブクブクとおならのように上がってくるのだ。他にも「カニ」と言って洗面器に石鹸水を入れて、上からタオルで覆う。それをフーッと吹くと泡が出てくる。そう言えば、子供のころカラスの行水だった私を、少しでも長く湯船に留めようと、父親が同じようにしてくれたことを思い出した。
 確かに、朝からの入浴の手伝いで、暑くてサウナのような環境にちょっと疲れていたことは否定しない。でも、まさかそれを見抜かれた?思わず「早く出たそうな顔してました?」とテツヤさんに聞き返す私に「いやいや、大丈夫」と言わんばかりの満面の笑みのテツヤさん。
 実はテツヤさん、以前は入浴が怖かった。麻痺している箇所に力が入らず湯船で浮いてしまってバランスを崩してしまうから。でも、今は手すりを掴んで、湯船の縁に上手に体を預けて入浴している。そして、今日の私への配慮。入浴に対して少し気持ちに余裕ができ、入浴の時間が気持ちの良いものに戻りつつある。そのことが何だか嬉しく感じた。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編

2013年08月20日

「婚活」

「婚活」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 セツコさんは87歳。若い男性職員を見かけると「結婚はまだ?」と聞いてくる。聞いた男性職員が結婚していないとわかると「この人どう?良い人よ。年上だけど、気立てが良くて料理も上手なの。」と懐から写真を取り出して薦めてくるのだ。
 その写真の女性がなかなかの美人。でも、どういうわけか写真は茶色っぽくなっていて今風な感じではない。「いつも懐に入れていたから汚れてしまったのね」と言うセツコさんの話を妙に納得していた私たち。
 先日、セツコさんの息子さんにお会いした。いろんな話をしているとセツコさんが持ち歩いている写真の話になった。「あれは、母(セツコさん)が若いころの写真ですよ。まだ、持っていたんですね。」と言う息子さんの言葉に、その場にいた私たちは驚愕。理由を息子さんに話すと「嫁にすると言ったら、母が嫁に来ますよ。それでも良ければどうぞ。」と言って笑っていた。
 今日も事情を知らない男性職員がセツコさんに「結婚は?」と声を掛けられ、写真を見せられていた。その写真を真剣にみている男性職員。そのあまりの真剣さに真相を話すタイミングを逃してしまった。セツコさんは認知症。昔の自分を忘れてしまったのだろうか。いや、実は、もう一度嫁に行こうと狙っているのかもしれない。年上、気立ての良さ、料理上手。何一つ嘘はついていないもんな。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編

2013年08月06日

「毎日、教えられてばかりです」

「毎日、教えられてばかりです」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 朝一番「おはようございます」元気に挨拶する職員。入居者も「おはよう」と答えてくれたり、無言でも目がそう言っていたり。どこに居ても、日常がスタートする時は大抵こんな感じだろう。
 ところが、先日、午後から出勤した職員が「おはようございます。」と挨拶したことから事は始まった。職員同士の挨拶だったのだが、それを聞いていた入居者のリツコさんは「あれぇ、今何時かね?さっき食べたのは、お昼ご飯じゃなかった??朝ご飯???」と戸惑い気味。隣にいたキヨシさんは「朝早くから大変ですな」と朝モードになってしまった。その後、「夕方5時のニュースです」とテレビで流れているのを見ていたキヨシさんが「やっぱり夕方じゃないか。あのお兄ちゃん寝ぼけてるわ。」と呆れ顔。
 そりゃあそうだろう。朝は「おはよう」昼は「こんにちは」夜は「こんばんは」と挨拶するのが一般的。時間に構わず、その日初めて会う人に「おはようございます」と言うのは俗に言う「業界用語」というやつだ。
 入居者の中には様々な病気や症状の方がいて、生活のリズムってのが大切になってくる。今回、それを崩しかけたのは、たった一言の挨拶だった。リツコさんやキヨシさんには、職員同士が時間や状況を考えずに「おはようございます」と言ってしまった浅薄さを反省させられた。ここは誰の生活空間で誰に配慮すべきかを考えれば、その時にする挨拶だって自ずと決まってくる。


  

Posted by syuri at 00:00Comments(0)介護編