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Posted by あしたさぬき.JP at

2015年12月25日

「絆」

「絆」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~


「握った手 節の力に人生の 浮かぶ情景 歩む 凛々しく」


離れて住む父子が父を想い読んだ詩。


冬の切れ間の暖かな日差しの中、
父が座る車椅子を押しながら散歩していると、
ふと手のこぶしの力強さを感じた。


父はもう何年も車椅子の生活が続き、自分の力で立つことは難しい。
けれど手は、長年漁師をしてきた手は、
昔と変わりなく大きくてごつごつしている。


武骨だけれど、どこか温かく懐かしい。


愛情と尊敬と期待が込められたようなこの詩は、
どんなに有名な詩人の歌にも勝る。


父を愛し敬うこの息子は、自らの子にも慕われる、
そんな関係を築くにちがいない。




  


Posted by syuri at 07:00Comments(0)介護編

2015年12月18日

「学ぶ姿勢」

「学ぶ姿勢」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

「大勢の人から多くを学びなさい」
 久しぶりにいただいたお抹茶の席で、その女性は私にこう教えてくれた。
 その昔、たしなみ程度に始めた茶道は、高級和菓子が食べられるのが唯一の楽しみで、お点前も順番をこなすだけの作業でしかなかった。赤い毛氈を敷き、朱色の大きな傘の下で本格的にしつらえられた野点さながらの情景は、とても風情があり、ここが介護施設なんてことを一瞬忘れさせる。
 久しぶりなのよ、と言いながら点ててくれたお抹茶は手作りの和菓子によく合う、とても上品な味だった。記憶をたどりながらたどたどしく振る舞う私にその女性は「飲んだ後に『おせいは?』と尋ねるのよ」と教えてくれた。いただいたお茶の産地を聞き、そんなに遠くから私の為にわざわざ取り寄せてくれて有難う、という気持ちをこめてお辞儀をするらしい。へぇー、そんな事まで教えてもらったっけな、と思いながら頭をあげると、更に女性はこう続けた。「若いうちにたくさん学びなさい、1対1なら言えない事でも第三者なら言える事もあるものよ。『私のお抹茶、美味しかったって言ってよ』って点てた本人は言えないけれど、第三者なら教えてあげられるでしょ。そして人数は多ければ多いほど、
学びは大きいものよ。」姿勢を正してこう話す女性は何だか誇らしげでとても美しかった。


  


Posted by syuri at 07:00Comments(0)介護編

2015年12月14日

気にかけてくれる誰か

「これ見とき」と朝イチ手渡された新聞の切り抜き。
よく見ると今日の運勢が星座別に書かれてある。

「今日の運勢どんな?今日は大変な日なんやろ」と
ニコニコしながら尋ねられた私は
どれどれ、と自分の星座の欄を見てみた。


『価値観の押しつけはNG.。お互いの考えを尊重して』…そうですか…。


今日は、20名余りの熱心な介護士たちが
自分の施設での実践を話し合うグループ討議の座長を務める大事な日。

昨日からソワソワして落ち着かない私を見かねた女性が
「落ち着きなさい」とわざわざ家から持って来てくれたのだった。

集まってきた介護士さんたちにこの話をしながら協力を求め、
何とか1日の討議は終了。

価値観を押し付けることなく、みんなの考えを聞き、
その意見を尊重しながら進めた討議は、まずまずの仕上がりだった。


それもこれもすべてあの新聞の占いのおかげ。
あの新聞を見ずに進めていたら、上手くまとまらなかったに違いない。


大変な1日が無事に終わったことに、
占いがあたったことに、
占い新聞を持って来てくれたことに、

何よりも私の事を気にかけてくれていたことに心から感謝だな。


次に会ったとき「ありがとう」ってお礼を言わなきゃね。



151211


  

Posted by syuri at 16:24Comments(0)介護編

2015年12月06日

「富士の麓から」

「富士の麓から」

〜心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて〜

富士の麓から、来られた初老のご夫婦
秋の紅葉、鮮やかな栗林公園
大きな口を開けて、餌の投げ入れを待つ彩ゆたかな鯉たち
茶室から、眺める伸びやかな樹木の枝葉
甘くひろがる茶菓子
樹木の緑と重なる抹茶の深い色味
これまでの人生の歩みをうつすかのような、
池にひろがる穏やかな波紋
櫓を漕ぐ船頭とともに、小さな屋形船は、すすむ
前へ、横へ、時には止まり、流れにまかせて
笠をかぶり、しばしの庭園主気分に浸ってみる
庵で、伝統の「あんもち雑煮」をほおばる
はじめての、味わい、こぼれる笑顔、頬がゆるむ
グラスのビールを飲み干す姿に勇ましさも
傍らにそっと寄り添う妻の姿にほっとする
地域福祉講演会
私の町はみんなが家族
毎年、遠路、お顔をみせてくれるこのご夫婦
自動車のトップセールスマンだったご主人様
まだまだ、現役バリバリ働き盛り
その矢先の、認知症の発症
先行きの見えない不安
手さぐりに支援を求めるも
掴みどころのない、差し伸べられた手
そんな時に出会った
富士宮 認知症フレンドシップ
ソフトボールでは、強烈なヒットを放ち
富士の山へと一歩一歩、登り
駅伝で汗の染みた襷をつなぐ
認知症だから、なんだ
認知症だからできる人



  


Posted by syuri at 07:00Comments(0)健康新聞

2015年12月04日

「確信犯」

「確信犯」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 週に何度か利用されている女性。一人暮らしが長いけれど、何とか一人で暮らしておられる。そんなある日の出来事。
 さあ、帰ろうという時刻になって「鍵がない」と言い出した。それは一大事、とみんなで探した。車の中もバッグの中もポケットの中もパンツの中も? 昔は鍵なんかかけずに買い物にも散歩にも出掛けていたのだが、かけ始めるとかけずにはいられない。どこに行くにもまず鍵をかける。ただ、かけるとすぐに失くしてしまうのが鍵。大騒ぎしながら探すのも何となく日課になっていた。けれど今度は様子が違う。しばらく探しても見つからない。
 仕方がないので今日はお隣さんに泊めてもらって、明日明るくなってからもう一回探そう、という事になった。お隣さんに電話で頼んでみると、あっさり承諾。さすが、お隣さん。近所付き合いが希薄になったと言われているこの世知辛い世の中、奇特な方もいるもんだ、とみんなで喜んでいると、おもむろにその女性、こう言った。「あった!」と。「ポケットの中から出てきたっ!!」へっ!?私がさっきポケットの中に手を入れた時にはありませんでしたけど??…やられた。…(失笑)。
 きっとみんなと一緒に泊まりたかったんだよね。みんな泊まるから帰りたくなかったんだよね。何度騙されても何だか、ほっこりしてしまう、これが彼女の手に違いない。これぞまさに「確信犯」だ。



  

Posted by syuri at 08:26Comments(0)介護編