2014年06月24日
「くるん? 」
「くるん? 」
「くるん?」「くるんやろ?」
週明けは、いつも、くるんくるん。
子どもたちが、駈け寄ってきては、くるんくるん。
そう、いつも待っているんです。
『来てくれることを。』お話をしたこと。駆け回ったこと。
ボールを投げ合ったこと。
みんなのこころに、くるんくるん。
お兄さん、お姉さんが、来てくれることを待っています。
いつも来てほしいとは、うまく言えないけど。
これなら、言えます。
「来るん?来るん?」
お兄さん、お姉さんは、気づいていますか?
子どもたちは、何度となく遊んだなかで、お気に入りのお兄さん、お姉
さんがいることを。
手をつないだり、駆け回るなかで、お気に入りのお兄さん、お姉さんが、
友だちに奪われた時の悔しそうなことを。
なかには、あまりの悔しさに泣いていますね。
待ってくれている人がいること、役割があること、とても素敵なことで
すね。
思い返してみると、子どものころ、大きいお兄さん、お姉さんに負けじ
と勝負を挑みました。
わざと負けてくれていたのかもしれない相撲、かけっこ。
そんなことも知らず、何度も挑みました。
少しだけ背伸びしながら。
そんな出来事の積み重ねが、今、大切な成長の糧であり、想い出とし
てあります。
専門学校の隣には、いつも、お兄さん、お姉さんが来てくれることを待ち
わびている子どもたちがすごす保育所があります。
さあ、今日も、くるん
くるん。
「くるん?」「くるんやろ?」
週明けは、いつも、くるんくるん。
子どもたちが、駈け寄ってきては、くるんくるん。
そう、いつも待っているんです。
『来てくれることを。』お話をしたこと。駆け回ったこと。
ボールを投げ合ったこと。
みんなのこころに、くるんくるん。
お兄さん、お姉さんが、来てくれることを待っています。
いつも来てほしいとは、うまく言えないけど。
これなら、言えます。
「来るん?来るん?」
お兄さん、お姉さんは、気づいていますか?
子どもたちは、何度となく遊んだなかで、お気に入りのお兄さん、お姉
さんがいることを。
手をつないだり、駆け回るなかで、お気に入りのお兄さん、お姉さんが、
友だちに奪われた時の悔しそうなことを。
なかには、あまりの悔しさに泣いていますね。
待ってくれている人がいること、役割があること、とても素敵なことで
すね。
思い返してみると、子どものころ、大きいお兄さん、お姉さんに負けじ
と勝負を挑みました。
わざと負けてくれていたのかもしれない相撲、かけっこ。
そんなことも知らず、何度も挑みました。
少しだけ背伸びしながら。
そんな出来事の積み重ねが、今、大切な成長の糧であり、想い出とし
てあります。
専門学校の隣には、いつも、お兄さん、お姉さんが来てくれることを待ち
わびている子どもたちがすごす保育所があります。
さあ、今日も、くるん
くるん。
2014年06月24日
「異食にあらず」
「異食にあらず」
異食行為とは、普通では食べられないものを口に入れて食べようとすること。アキオさんは
コーヒー豆を口に入れる。それを、ある人は、「異食行為だから気を付けた方が良い」とアキオさん
の家族、特に奥さんのシズコさんに注意するよう促した。
「異食だから気を付けろ。」と言われると、あまり気分の良いものではないかもしれない。
でも、アキオさんやシズコさんのことを思っての助言に、シズコさんは嫌な顔なんて一つもせずに、むし
ろ感謝している。ただ、アキオさんがコーヒー豆を口にすることを直ちに止めようとは思っていないようだ。
シズコさんが言うには、コーヒー豆の他に、生のジャガイモやネギなどの野菜類、それに時々、
蟻を口にすることはあるが、プラスチックや洗剤などは決して口にはしないのだとか。シズコさんは、
怒ったように笑いながら「自然災害か何かで、火や水が使えないという状況になっても、じいさん(アキオさん)なら生きていける。」と太鼓判を押す。
「蟻?戦時中はカタツムリも食べてたわ!!」
と教えてくれた。困った行為というよりは、ちょっとした自慢のようにも聞こえてくる。
いつも、奥さんのシズコさんが、肩肘張らずに、無理のない笑顔でいられるのは、そんな考え方
の持ち主だからだろうか。そして、アキオさんが幸せそうなのは、そんなシズコさんが傍にいるからだ
ろう。そう言うと、きっとシズコさんは「買いかぶるな!! 」と怒ったように笑うのだ。
異食行為とは、普通では食べられないものを口に入れて食べようとすること。アキオさんは
コーヒー豆を口に入れる。それを、ある人は、「異食行為だから気を付けた方が良い」とアキオさん
の家族、特に奥さんのシズコさんに注意するよう促した。
「異食だから気を付けろ。」と言われると、あまり気分の良いものではないかもしれない。
でも、アキオさんやシズコさんのことを思っての助言に、シズコさんは嫌な顔なんて一つもせずに、むし
ろ感謝している。ただ、アキオさんがコーヒー豆を口にすることを直ちに止めようとは思っていないようだ。
シズコさんが言うには、コーヒー豆の他に、生のジャガイモやネギなどの野菜類、それに時々、
蟻を口にすることはあるが、プラスチックや洗剤などは決して口にはしないのだとか。シズコさんは、
怒ったように笑いながら「自然災害か何かで、火や水が使えないという状況になっても、じいさん(アキオさん)なら生きていける。」と太鼓判を押す。
「蟻?戦時中はカタツムリも食べてたわ!!」
と教えてくれた。困った行為というよりは、ちょっとした自慢のようにも聞こえてくる。
いつも、奥さんのシズコさんが、肩肘張らずに、無理のない笑顔でいられるのは、そんな考え方
の持ち主だからだろうか。そして、アキオさんが幸せそうなのは、そんなシズコさんが傍にいるからだ
ろう。そう言うと、きっとシズコさんは「買いかぶるな!! 」と怒ったように笑うのだ。
2014年06月10日
「流行の髪型」
「流行の髪型」
月に数回、美容室の方が入居者の髪を切りに来てくれる。行きつけの美容室に行く入居者もいるのだが、全員が美容室に行けるわけではないので、行くのが難しい方は、この、月に数回を楽しみにしている。
ミチコさんは脳梗塞のため車椅子での生活を余儀なくされているが、身に着けるものやお化粧にはこだわりがある。当然、髪型にもこだわりがあるわけで…。いつも施設へ来てくれる美容師を悩ませている。皆さんは“ヘプバーンカット”というのをご存知だろうか? 外国の名女優の髪型を真似したものらしく、1950年代に流行っていたらしい。ミチコさんは、ちょうどその世代。「ヘプバーンカットで。」と美容師に注文する。
美容師は若いから、女優の名前くらいは知っていても髪型まではわからない。スマホを使って、“ヘプバーン”を探し、髪型を確認しながらミチコさんの髪を切っていくのだ。ミチコさんは若いころから仕事に明け暮れていた。そのため、周りの同世代の女の子が流行のファッションや髪型を楽しんでいるのを、羨ましく思っていたと言う。今、あの頃できなかった髪型を楽しんでいるのだろう。
お気に入りの髪型になったミチコさん。明け方こっそり居室を抜け出しシゲルさんとお茶をして、その帰りに、窓から見える綺麗な景色を眺めながらパンをかじっている。何だか名女優の映画のワンシーンのようだ。ミチコさんの青春は、まさに今なのだ。
月に数回、美容室の方が入居者の髪を切りに来てくれる。行きつけの美容室に行く入居者もいるのだが、全員が美容室に行けるわけではないので、行くのが難しい方は、この、月に数回を楽しみにしている。
ミチコさんは脳梗塞のため車椅子での生活を余儀なくされているが、身に着けるものやお化粧にはこだわりがある。当然、髪型にもこだわりがあるわけで…。いつも施設へ来てくれる美容師を悩ませている。皆さんは“ヘプバーンカット”というのをご存知だろうか? 外国の名女優の髪型を真似したものらしく、1950年代に流行っていたらしい。ミチコさんは、ちょうどその世代。「ヘプバーンカットで。」と美容師に注文する。
美容師は若いから、女優の名前くらいは知っていても髪型まではわからない。スマホを使って、“ヘプバーン”を探し、髪型を確認しながらミチコさんの髪を切っていくのだ。ミチコさんは若いころから仕事に明け暮れていた。そのため、周りの同世代の女の子が流行のファッションや髪型を楽しんでいるのを、羨ましく思っていたと言う。今、あの頃できなかった髪型を楽しんでいるのだろう。
お気に入りの髪型になったミチコさん。明け方こっそり居室を抜け出しシゲルさんとお茶をして、その帰りに、窓から見える綺麗な景色を眺めながらパンをかじっている。何だか名女優の映画のワンシーンのようだ。ミチコさんの青春は、まさに今なのだ。
2014年06月03日
「生きていく力」
「生きていく力」
~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~
「ちょっと、これ持って行きなさい。」そう言いながら、金平糖を分けてくれるサチコさん。居室の前を職員が通るたびに「これ持って行きなさい。」とお裾分けをくれる。これはサチコさんの生活の知恵なのだ。
サチコさんは施設に入所してくる前は、地域で一人暮らしをしていた。身内は息子さん御一人だけ。その息子さんは県外で暮らしている。そのため、サチコさんは生活の全てをほぼ一人でこなしていた。でもその裏で、サチコさんを支えていた近所の小学生たちがいたのだ。
サチコさんは昔から足が不自由だった。それは高齢になると更に悪くなり、外出することが難しくなっていた。でも、隣近所の小学生に物語や歌を聞かせたり、お菓子をお裾分けしたりして仲良くしていたから、「ばあちゃん、飲み物買って来たよ。」とか「ばあちゃん、困ったことない?」とか言いながら、小学生が毎日のようにサチコさん宅を出入りしていたのだ。荒っぽい言い方をすれば、小学生たちを「手なずけていた」ということになるのだが、私には、それがサチコさんらしくて実に逞しい力だと感服した。
施設へ来てからも、職員をお裾分けで手なずけようとしているのだろうか。不謹慎かもしれないが、そうであって欲しいと思う。見栄を張り、体裁や世間体を気にしすぎて自分をなくしていくよりも、方法はどうあれ、自分の生活を維持するために、あらゆる手を尽くす。その、生きることに全力な姿勢に尊敬の念すら覚える。
~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~
「ちょっと、これ持って行きなさい。」そう言いながら、金平糖を分けてくれるサチコさん。居室の前を職員が通るたびに「これ持って行きなさい。」とお裾分けをくれる。これはサチコさんの生活の知恵なのだ。
サチコさんは施設に入所してくる前は、地域で一人暮らしをしていた。身内は息子さん御一人だけ。その息子さんは県外で暮らしている。そのため、サチコさんは生活の全てをほぼ一人でこなしていた。でもその裏で、サチコさんを支えていた近所の小学生たちがいたのだ。
サチコさんは昔から足が不自由だった。それは高齢になると更に悪くなり、外出することが難しくなっていた。でも、隣近所の小学生に物語や歌を聞かせたり、お菓子をお裾分けしたりして仲良くしていたから、「ばあちゃん、飲み物買って来たよ。」とか「ばあちゃん、困ったことない?」とか言いながら、小学生が毎日のようにサチコさん宅を出入りしていたのだ。荒っぽい言い方をすれば、小学生たちを「手なずけていた」ということになるのだが、私には、それがサチコさんらしくて実に逞しい力だと感服した。
施設へ来てからも、職員をお裾分けで手なずけようとしているのだろうか。不謹慎かもしれないが、そうであって欲しいと思う。見栄を張り、体裁や世間体を気にしすぎて自分をなくしていくよりも、方法はどうあれ、自分の生活を維持するために、あらゆる手を尽くす。その、生きることに全力な姿勢に尊敬の念すら覚える。