この広告、メッセージは90日以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事でこのメッセージが消せます。
  

Posted by あしたさぬき.JP at

2015年01月30日

「地域では若輩者の私」

「地域では若輩者の私」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 先日、地域の清掃活動に参加した。私の住んでいる地域は定期的に清掃活動が行われるが、私は今回、初めて参加した。
 意外と多くの方が参加していて、そんな中に、デイサービスに来ているユミコさんがいた。近くに住んでいることは知っていたが、まさか、清掃活動に参加しているとは。ユミコさんは独り暮らしで、軽度ではあるが認知症の症状がみられるのだ。
 ユミコさんに声を掛けると、ユミコさんの隣にいた女性が「毎回、一緒に参加している。」と教えてくれた。毎回参加しているというだけあって、ユミコさんは慣れた感じ。私は、初めてだから集めたゴミをどこに持って行けば良いのかが解らない。すると、ユミコさんが「あそこに持って行くの。」と教えてくれた。それからは、気が付けばユミコさんの姿を探していた。顔見知りもいないし話す相手もいない、だから心細い。そんな状況だから、私は、ユミコさんを完全に頼りにしていたのだ。それを察してか、ユミコさんは、いろんな人を私に紹介してくれた。おかげで、なんとか地域の一員になることができた。ユミコさんも、一緒に来ていた女性や、紹介してくれた人たちに支えられているのだろうな。
 しかし、不安そうな私を見て「デイサービスで助けてもらっているから、ここでは、私が助けてあげるわ。」と笑ってくれたユミコさんは、私の目にとても逞しく映った。


  


Posted by syuri at 07:00Comments(0)介護編

2015年01月23日

1月20日の記事

「血圧の上がる原因」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 ある受診の日、80歳のヨウコさんが鞄の中に小さな箱を入れていた。ヨウコさんに聞くと箱の中身はボールペン。詳しく聞けば、いつも受診で世話になっている先生に渡すプレゼントなのだと言う。ヨウコさんの担当の先生は50歳くらいの、がっしりした男らしい先生だ。どうやら、その先生のことがヨウコさんは気になる様子。「いつも血圧を計るときに、手を優しく握ってくれて緊張するわ。」と嬉しそうに話してくれた。
 普段は正常な血圧のヨウコさんも、受診のたびに血圧が高くて、初めは白衣性の高血圧かと言われていた。白衣性の高血圧とは、病院の診察室などで普段よりも高い血圧が計測される現象のことを、白衣性高血圧とか白衣症候群とかいうのだが、皆さんも、そんな経験があるのではないだろうか? 
 ただし、今回のヨウコさんの場合は、同じ緊張でも白衣に対してではなさそう。お気に入りの先生に手を握られて緊張してドキドキして血圧が上がっているのだろう。ヨウコさんが「先生もいつか気付いてくれるだろうか(私の気持ちに)?」と言っている姿を見る限り間違いなさそうだ。
 昔は、好きでも好きと言わないのが可憐だったそうだ。なので、いつか、先生には気付いてもらいたい。これは決して白衣性高血圧なんかではなく恋心なのだと。


  


Posted by syuri at 07:00Comments(0)介護編

2015年01月16日

「シゲルさんと孫」

「シゲルさんと孫」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 今日は風が強く一段と寒い。初詣にシゲルさんを連れ出すのだとシゲルさんの息子夫婦と孫が施設に面会に来た。
 いつもなら、あっというまに用意ができて出かけていくはずなのに、今日は何やら準備に時間がかかっているようだ。「何かお手伝いすることありますか?」とシゲルさんの居室を覗くと、何やら険悪なムード。シゲルさんと孫が「これは、どういうこと?」とシゲルさんからすれば嫁、孫からすれば
母親に問い詰められている。 聞けば、小学生の孫は、今まで学校であった試験で、点数の悪いテスト用紙をシゲルさんの外出用の上着のポケットに隠していたようだ。ここ最近、シゲルさんは外出用の上着を着ていなかった。それが、今日みたいな寒い日に外出することになって「これ着て行こう。」と嫁が着せてくれた上着のポケットから、テスト用紙がぽろり。当然、シゲルさんも諸事情を知っていて今まで上着を出してこなかったわけだが。今日まで気付かな
かった私も何だか申し訳なくて、一緒に怒られている気分だった。
 不思議なもので、私も祖父と結構な時間を一緒に過ごしてきたが、思い出されるのは一緒にした悪戯のことばかり。じいさんと孫とはそんなものだろう。シゲルさんと孫だってきっと…。そして、良くも悪くも、いろんな意味で孫から頼りにされているシゲルさんは、孫にとって欠かせない存在のようだ。


  


Posted by syuri at 07:00Comments(0)

2015年01月13日

「日曜大工」

「日曜大工」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 施設のテレビ台が壊れてしまって、新しいテレビ台を探していた。でも、良いのが見つからない。そんなことを入居者のアキオさんと話していたら「それなら、自分が納得いくものを作ったら良い。」そう言うのだ。
 実は、アキオさんが大工だったと知ったのはその後の事。「誰にも言ってなかったが、ワシ、若いころ大工もしていた。」と得意顔のアキオさん。「お前は若いけど見込みがある。弟子にしてやる。」とアキオさんに言われ、嬉しくなった私も「お願いします。」と返事をした。
 テレビ台を作ることになってから、アキオさんの生活は一変した。あれほど出無精だったのに、材料を買いに行くとなると真っ先に出ていくようになったし、寒がりで、服を重ね着し達磨みたいになっていたのに、Tシャツにねじり鉢巻き姿が定番となってきた。そして、口数が少なかったはずなのに、弟子の私にいろいろ教えてくれる。仕事やお金の大切さ、家族の有り難さなど。
 余談だが、弟子になった私の最初の仕事は、釘を支えること。アキオさんは脳梗塞で左半身に麻痺が残るから、金槌を持つと釘が支えられないのだ。私が支える釘めがけて躊躇することなく金槌を振り下ろすアキオさん。「さすがですね。百発百中じゃないですか。」と安心していたら、「ワシの得意は釘打ちではない。やすり掛け。」と笑いながら言うので、それ以来、私の釘を支える手が震えてしまう。


  


Posted by syuri at 17:00Comments(0)

2015年01月13日

「大切な相方」

「大切な相方」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 マスミさんとケイコさんは、食事時になるといつも言い争いをしている。食べ物の嗜好の違いとか、食べる順番の違いとか、そんな内容の事で大喧嘩になることもあるのだ。
 ある日、マスミさんが夕食時に「いつものケイコさんと様子が違う。」と医務室にやってきた。「いつも、私が何か言うと何十倍にもして言い返してくるのに、今日は何も言い返してこない。下を向いて『もう喧嘩もできんかもしれんな。』と呟いている。」と心配そうなマスミさん。看護師がケイコさんのところへ駆けつけると、確かに元気がない。熱があるわけではないようだが、眩暈がすると言うので居室で横になってもらうことにした。
 次の日になっても眩暈が続くようなら受診することで家族とも話が決まった。それからは、容態が急変してもすぐに対応できるよう、職員が頻繁に見回りに行くようにしたのだが、一晩中、ずっと付き添っていたのがマスミさんだった。ケイコさんのベッドの横に椅子を持ってきて座り、ずっと見守っていてくれたのだ。次の日の朝にはケイコさんの様子も普段と変わらずで、念のために受診したが特に異常はなかった。
 ケイコさんは一晩中マスミさんが付き添ってくれていたことを知らない。マスミさんもそんなことをケイコさんに言うつもりはないようだ。今日もいつも通り、言い争いをしているお二人。でも、気持ちのどこかではしっかり繋がっているのだろう。


  


Posted by syuri at 13:23Comments(0)介護編