2015年01月13日

「日曜大工」

「日曜大工」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 施設のテレビ台が壊れてしまって、新しいテレビ台を探していた。でも、良いのが見つからない。そんなことを入居者のアキオさんと話していたら「それなら、自分が納得いくものを作ったら良い。」そう言うのだ。
 実は、アキオさんが大工だったと知ったのはその後の事。「誰にも言ってなかったが、ワシ、若いころ大工もしていた。」と得意顔のアキオさん。「お前は若いけど見込みがある。弟子にしてやる。」とアキオさんに言われ、嬉しくなった私も「お願いします。」と返事をした。
 テレビ台を作ることになってから、アキオさんの生活は一変した。あれほど出無精だったのに、材料を買いに行くとなると真っ先に出ていくようになったし、寒がりで、服を重ね着し達磨みたいになっていたのに、Tシャツにねじり鉢巻き姿が定番となってきた。そして、口数が少なかったはずなのに、弟子の私にいろいろ教えてくれる。仕事やお金の大切さ、家族の有り難さなど。
 余談だが、弟子になった私の最初の仕事は、釘を支えること。アキオさんは脳梗塞で左半身に麻痺が残るから、金槌を持つと釘が支えられないのだ。私が支える釘めがけて躊躇することなく金槌を振り下ろすアキオさん。「さすがですね。百発百中じゃないですか。」と安心していたら、「ワシの得意は釘打ちではない。やすり掛け。」と笑いながら言うので、それ以来、私の釘を支える手が震えてしまう。

「日曜大工」




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