社会福祉法人守里会 新聞連載コラム

「ありがとうございます」

　今年も、近所の小学校が、施設の入所者をコンサートに招待してくれた。小学生の演奏に感動した去年を思い出し、今年も行かせていただく返事をした。
　招待され感動をいただいてばかりでは申し訳なく年長者としての面子が立たぬと、入所者のアツコさんの一言で、何かこしらえて、お礼に変えようということになった。結果、地味だが実用的な雑巾を小学生にお礼として渡すことにした。
　入所者の皆さんの中には、病気で麻痺が残る人がいる。その方が、雑巾を真っ直ぐに縫うというのは難しい。どうしても縫い目が曲がってしまう。「それならば、最初から円く縫っちまえ。」と、縫い目が円形の雑巾がたくさん出来上がった。
　電話での打合せの際「雑巾ですか。それであれば、入所者の皆さんが、直接、子供たちに渡してください。そのほうが子供たちも嬉しいし、作ってくださった方々にも喜んでいただけるでしょう。
　その時間を作りますから、お時間いただけますか？また、明日、電話します。」と、電話の向こうで先生の声は弾んでいた。当日、小学生が演奏した後に、雑巾を贈呈する時間を作ってくださり、子供たちへ雑巾を手渡すことができた。「この雑巾、模様が入っていて綺麗。」と円形の縫い目の雑巾は意外と好評だった。子供たちの嬉しそうな
笑顔と、先生たちの粋な計らい。今年も、感動させられたのはこちらだったなと思い、感謝しながら帰路についたのだった。