2016年08月05日

「ちょっと、お尋ねします」

「ちょっと、お尋ねします」
~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

その男性
施設での生活も早4年。

車椅子で生活するようになって
3年が過ぎ

認知症を発症しているわけではないけれど
何となく
誰かの手を借りながらでないと
生活しづらくなってきた。

絵を描くのが趣味で
いろんな所に出掛けては絵を描き

時には気に入った風景なんかを
写真に収めたりしていた。


ある日のこと

夜勤をしているとふいに声を掛けられた。

「僕宛に○○というところから
電話が掛かってくるかもしれないから
必ずつないでくれ。」と。

あまり聞きなれない名前だったので
何となく聞き返してみた。

すると「新聞の広告で見つけてね、求人。
雇ってくれるか問い合わせてるんだ。」と

ちょっと得意げに話してくれた。



介護度4のその男性、
事務員募集の求人広告を見て
これなら自分のキャリアを生かせるはずだ
と自ら電話したらしい。



何とまあ…そりゃもちろん
73歳でバリバリ働いている人は
たくさんいますけどね。

まだまだ現役でいたい、って
心意気は大したもんだ。

けれど、結果は…。



数日して、
就職できずに落ち込んでいたその男性に
仕事が舞い込んだ。

それはペットボトルのキャップを
ワクチンに変えるお仕事。

段ボールに何箱もたまったキャップを数え
いくつワクチンに変えられるかを
計算するお仕事。

その仕事が多くの子どもの命を救う
と知ると、

男性は意気揚々と
キャップを数え始めてくれた。

その眼差しは
いつになく真剣で

その男性の
仕事に向かう誠実さと熱意を
表していた。

「ちょっと、お尋ねします」




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