2013年05月28日

「伝えそびれた気持ち」

「伝えそびれた気持ち」

~心に積み重なる様々な出来事をこのコラムに寄せて~

 宿直の日の夜。施設の宿直室に独りこもって、何事も無いように祈りながら眠りについた。
 夜中の2時30分ごろ宿直室の電話が物凄い音で鳴り出した。呼び鈴の音からして内線だということはわかる。それで、特養に入所している人に急変でもあったかと、飛び起きて電話に出た。
 「はい。何かありました?」とたずねると電話の向こう「じいさん。じいさん。仏さん(仏壇)に供えた饅頭を片付けといてくれ」と女性の声がする。夜中の2時30分に起こされ覚醒しきっていない私は状況がうまく飲み込めない。「もしもし…」ともう一度たずねても「じいさんか?饅頭を片付けといてくれ」と言う女性。その聞き覚えのある声にピンと来て、2階へ駆け上がった。
 案の定、2階の寮母室にサキさんの姿がある。どうやら夜勤者は入居者の居室を回っているようで、寮母室には誰もいない。私はサキさんに声をかけて、一緒に居室まで行き布団に入ってもらった。「じいさんに伝えておいてください」と最後まで、饅頭の片付けを気にしていたサキさん。サキさんのじいさん、つまり旦那さんが亡くなって3年余り。先日娘さんとお墓参りに行っていた。“饅頭お供えしたからしっかり食べてください”と手を合わせるのを忘れてきたのだろうか。もう一度言うが夜中の2時30分。この電話で亡くなった人と会話が…と考えると怖いのだが、サキさんの気持ちが伝わる素敵な夜なのでした。

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